原木市場の仕事

上吉野木材協同組合は奈良県吉野町で吉野杉・吉野桧・各種原木丸太を売買する国産材原木市場です。
原木市場は、生産者から集めた原木丸太を選別、仕分けを行い原木市を開催します。

製材所や木工所など、原木丸太を必要とするお客様に販売することが私たちの仕事です。
購入者から購入代金を受取り、生産者に売上代金を支払う役割があります。

山で伐採された立木は、同じ樹種・同じ樹齢であっても1本1本の木の状態が異なります。
1本の立木から元玉、2番玉、3番玉と3mか4mに小切ります。
何番玉かによっても状態や使用用途が異なってきます。

原木市場では、様々な長さ、太さ、状態の原木丸太が集まります。
入荷した原木丸太を製材所や木工所などの購入者が買いやすいように、また出品された原木が適正な価格でせり落とされるように、1本1本の原木丸太を確認して選別・仕分けをおこないます。

1、入荷

原木丸太が入荷

ヘリコプター集材後、山の土場でトラックに原木丸太を積み込みました。これから上吉野木材協同組合の土場に運び込まれます。

トラックに杉や桧、広葉樹などの原木丸太を積んで、上吉野木材協同組合の土場に運び込まれます。

長尺のままトラックで運んで、土場で採寸・小切り作業も可能です。

あらかじめご連絡ください。
市日前の椪列状況によっては、土場が使用できない場合がございます。ご了承ねがいます。

出荷は市日3日前までにお願いいたします。

土場で採寸・小切り作業

ヘリコプター集材後、8メートル材(元玉と2番玉をつけたまま)をトラックで上吉野木材協同組合まで運んだ後、当組合の土場で小切作業中です。

土場で採寸・小切り作業

厘木(りんぎ)の上にグラップルで長尺材を置いてチェーンソーで小切ります。もう1台のグラップルで小切り終えた丸太を移動させています。

2、荷降ろし

トラックに積まれた原木丸太を上吉野木材協同組合の土場に降ろします。原木丸太を傷つけないように丁寧に荷降ろしします。

春から初夏にかけての原木丸太は水分を多く含んでいる為、樹皮がはがれやすく傷つきやすくなっています。原木丸太を傷つけないように十分に気をつけて荷降ろし作業を行います。

グラップルによる荷降ろし

グラップルによる荷降ろし作業

大きな爪で原木丸太をつかんで、トラックから降ろします。

フォークリフトによる荷降ろし

フォークリフトによる荷降ろし作業

フォークリフトの爪で原木丸太をすくい上げて、トラックから降ろします。

3、出荷主ごとに分ける

出荷主ごとに分けて管理

入荷した原木丸太を出荷主別に分けておきます。出荷主ごとに原木丸太が混ざらないように管理します。

同一出荷主でも出材場所や樹齢が、違う場合は分けておきます。

4、樹種を分ける

杉の杯積み

  杉:赤身と白太の色がはっきり分かれています。

桧の杯積み

  桧:全体的に薄いピンクや黄色みをおびています。

杉、桧、その他の木に原木丸太を仕分けします。

杉と桧の見分け方

小口(切り口の断面)を見る

杉は中心部分の「赤身(芯材)」と外周部分の「白太(辺材)」がはっきり分かれています。中心部分は薄いピンクから濃いピンクや黒色の木があり、外周部分は白色です。
桧は中心部分と外周部分の色の差はそれほどありません。全体的に薄いピンクや黄色みをおびています。

木肌を見る

樹皮は、杉・桧ともに縦に割れ、細長い薄片となっており、表面の樹皮は薄くはがれ落ちます。
樹皮だけでは、杉か桧か判断できない場合があります。山では葉の形の違いを見て判断します。

杉の木肌

杉の木肌

縦の割れが細かい

桧の木肌

桧の木肌

縦の割れが粗い

5、長さを測る

原木丸太の長さを測ります。2m、3m、4m、5m、6m・・と基本1mきざみで端数は切り捨てとなります。
1メートルごとの長さに分けます。

余尺の長さ

出品する原木丸太には余尺をつけてください。
元木 :根張を外して40㎝~50㎝以上(太さや根張りの状態によって、元木の余尺は変わります。)
元木以外:10㎝以上はつけてください。

6、元木と元木以外に分ける

元木と元木以外に分ける

木を伐って3、4メートルに木を小切ります。根元に近く1番太い部分が元木です。
元木は、木を伐る時についた受け口の跡や根張を切った跡で判断します。
元木のキズや芯抜けを取るために株上げをして受け口の跡がなくなった場合は、元木と解るように受け口跡を作ってください。

7、寸検

径級記入

  チョークで径級を末口に記入

末口直径を測る

・樹皮を除いた末口(丸太の切り口が細い方)の最小直径をメジャーで測ります。

・2㎝とびで表記し、端数は切り捨てとなります。この2㎝ごとのクラス分けを径級と呼びます。
末口直径14㎝以下は1㎝きざみの経級となります。

・末口の最大径と最小径が6㎝以上差がある場合、最小径に2㎝加算します

末口面は、原木丸太の顔です。泥などで汚れている場合は、余尺に気を付けて、小切り直してください。

きれいに小切られた末口

きれいに小切られた末口

きれいに小切られた桧の末口断面

きれいに小切られた元口

きれいに小切られた元口

きれいに小切られた桧の元口断面

枝打ちの跡

枝打ちの跡

末口に枝打ちの跡がきれいに出た桧材。

末口の最大径と最小径が6㎝以上差ある原木

末口の最大径と最小径が6㎝以上差ある原木

最大径:50㎝、最小径40㎝。6㎝以上の差がある為、最小径に2加算して径級は42となります。

腐り部分を除いて寸検

腐り部分を除いて寸検

白太の腐り部分を除いて寸検した原木丸太

中心の腐り部分を含めて寸検

中心の空洞部分を含めて寸検

中心の腐って空洞となった部分を含めて寸検、直径を計り径級は86となります。

8、選別

小口を確認

  小口を確認。元口と末口から曲がりを確認

曲がりを確認

  転がしながら曲がりと木肌を確認

元口、末口(小切った断面)を確認します。
・枝打ち跡(枝打ち時期、無節材はとれるか、枝打ちによる腐り、シミはないか)
・年輪の込み具合
・年輪の始まり(芯)の位置
・色(黒芯や渋。杉は特に重要視されます。)
・欠点はないか(腐り、あて、割れ、空洞)


原木丸太を平らアスファルトの上で転がし、元口、末口から曲がりを確認して、木肌を一周くまなくチェックします。
・曲がり
・節はないか
・枝打ち(枝打ち跡から枝打ちの時期が遅くないか)
・欠点はないか(腐り、割れ、ハブシ、カゼ)

転がしながら枝打ち跡から枝打ち時期を確認。欠点がないかチェックします。
欠点がある木に印を入れ、同一状態の木をまとめて一山として複数本まとめ売りする場合があります。

無節材

無節材

適切な時期に枝打ち作業が行われ、枝打ちの跡がきれいな原木丸太。
枝打ち跡が綺麗に巻き込まれて外皮から判別できない原木丸太。

節材

節材

枝を切り払った跡がある原木丸太。
枝打ちが遅く枝打ち跡が大きい原木丸太。

枝打ちの跡

末口に枝打ちの跡がきれいに出た桧材

枝打ちの跡

枝打ちの跡に変色がなく小さく、年輪の始まりに近いほど枝打ちの時期が早く適切な時期に枝打ちが行われたことが判別できます。

ひも打ち跡

元木の元口にひも打ち跡がきれいに出た桧材

ひも打ち跡

人口林として早い時期から適切な手入れが行われた証。

直材

直材

真っ直ぐな原木丸太。
芯が真ん中にあり、真ん丸で年輪が詰まった桧の原木。

曲がり材

片側(右側)にすこし曲がっている

曲がり材

直材ではなく曲がった原木丸太

芯がずれた原木丸太

芯がずれた原木丸太

年輪の始まり(芯)が真ん中にない原木。
芯が真ん中からずれた材でも、製材時の木取りにより高価な材が取れる場合があります。

目あらな原木丸太

目込み

年輪の間隔が狭く一定である材は、製材した時に綺麗な木目が出て吉野材として高値で落札されます。
ha当たりの植え付け本数が少なく密植されていない場合や、1度にたくさんの立木を間伐した場合など、
必要以上に成長してしまい年輪の幅が大きくなりすぎることがあります。

あて

赤枠で囲まれた青く変色した部分があてです。

あて

斜面に生えている木が谷側に傾かないように形成される個所を、圧縮あて材と呼びます。
広葉樹は針葉樹とは逆に山側に引っ張りあて材が形成されます。
ひどい場合、あて材の個所が反る場合があります。

黒芯

黒心

杉の赤身の色が黒色。含水率が高く、乾燥しても吉野杉特有の淡紅色が出にくい。
立木の状態では判断できず、伐採して倒した木の切り口を見るまで判りません。
葉枯らし乾燥により黒色(渋)が抜けていく場合もあります。

ぼたん材

ぼたん材(シミ、ほし材)

枝打ち時の大きな傷や枯枝が折れて残った場合など、幹が傷ついたときに変色します。

腐り

腐り

間伐、集材時の当たりキズ、枝打ち不良や、獣害、虫、病気などから年月が経ち腐った個所がある原木丸太

空洞

空洞

腐った個所がさらに年月が経ち空洞となった原木丸太

干割れ

日光や温度差、外気に触れている木の表面と内部との乾燥の速度の違いにより、細かくヒビのような割れが小口の表面に出ます。
干割れは表面だけで内部に達してなく、原木丸太の状態としては問題はありません。

割れ

割れ

木を倒すときの衝撃や、出材、小切る時に割れてしまった原木丸太。

目割れ 立木の目割れ

目割れ(水割れ)

木目に沿って割れが入ることです。木内部の水分が凍り、内部で凍結個所が破裂して起こります。水分量の多い杉で発生します。
目割れを起こした立木は、縦に長い切れ目が入ります。

目割れ(強風)

目割れ(強風)

木目に沿って割れが入ることです。強風などで木がゆすられて木目に沿って割れが入った桧材。

シナの入った木 シナの入った木

シナ(シカミ、カゼ)

強風によって木の繊維が切れた時の修復跡。
大きく繊維が切れた場合、修復跡が膨らんでしまいます。

葉節 葉節

葉節(ハブシ)

杉の根本近くの木肌に出る小さなつぶつぶが葉節です。製材すると小さな赤い丸印が出る場合があります。



9、椪列(はいれつ:原木丸太を並べる)

椪列

  選別を終えた原木丸太を並べます。

椪列

  左から椪番:1064黄色チョーク2本組、椪番:1065ピンクチョーク5本組、椪番:1066白チョーク2本組の販売となります。

買手が原木丸太を詳しく確認できるように原木丸太を並べていきます。基本並みの原木丸太から良材になるように並べます。
1、杉、桧、その他の樹種に分けます。
2、出品者ごとに分けます。出品者が同じでも出材された場所(山)、樹齢が違う場合は分けます。
3、基本は以下の順に原木丸太並べます。(前後する場合もあります)

・長さ (短い順)

・元玉以外から元玉

・径級(小さい順ですが、原木の状態により前後する場合があります。)

原木丸太の欠点(腐り、キズなど)が側面にくるように丸太を置きます(欠点が複数ある場合や丸太の据わり具合で側面ではない場合があります)。
椪列した原木丸太に椪番(椪列番号)を記入します。 1本売り複数本売りがあり、複数本売りの末口には同じ色のチョークの線が引かれています。

並べた原木丸太の末口に椪列番号をチョークで記入します。
原木丸太が並んでいる場所によって1000番台、1100番台と椪列番号の千と百の位が決まっています。詳細は→椪番地図を確認ください。

10、手板作成(材積計算)

手板作成画面

長さ、径級、本数を入力して材積を計算します。

材積計算4m

例1の原木丸太 単価(単位:千円)です。

材積計算6m

例2の原木丸太 単価(単位:千円)です。

椪列番号ごとの径級、長さをもとに末口2乗法を用いて原木丸太の材積を算出します。

原木丸太の材積の計算方法

長さが6m未満のもの

長さが6m以上のもの

V = 材積 : 単位 m³ 小数点以下4位を四捨五入

D = 末口の最小径 : 単位 cm

L = 丸太の長さ : 単位 m

L' = 丸太の長さ : 単位 m(数値で1に満たない端数を切り捨てたもの 例:6.2m=6で計算)

詳細は農林水産省のHP「素材の日本農林規格 - 農林水産省」を参照して下さい。

11、見積書作成

・椪列された丸太の予想金額を記入して、出品者に渡します。

・見積もり額は競り上がりが少ない想定です。


以上が市当日までに行う作業となります。


12、市売り

市風景 市風景

市当日、鐘の音を合図にせり売りを開始します。杉、桧交互にせり売りを行います。
振り子が、開始値(単価)を告げ開始値からのせり上げ方式です。
購入を希望する買い手は、値段を振り子に口頭で告げます。最も高い値段を付けた買い手が購入へとなります。

落札時、帳面と原木丸太の末口と元口に単価、買い番を記入します。単価の単位は千円です。

市売 末口

末口

末口に単価と買い番を記入します。単価の単位は千円(単価30万) 

市売 元口

元口

元口に単価と買い番を記入します。

13、精算

出荷主様

売上表、売上報告書(精算書)を送付します。出荷材積証明書が必要な方はお申し付けください。
市後5日以内にご指定の金融機関に振込送金いたします。

売上表 杉

売上表 杉

杉の売上一覧表です。

売上表 桧

売上表 桧

桧の売上一覧表です。

売上報告書(精算書)

売上報告書(精算書)

市売手数料 : 売上額(税抜き)の7%
椪列料 : 1㎥当り850円(税抜き)

出荷材積証明書

出荷材積証明書

要望者のみ送付します。必要な方は連絡下さい。

買主様

買上一覧表、買上報告書(精算書)を送付します。奈良県産材証明書が必要な方はお申し付けください。
市売り後7日以内に代金をご精算のうえ、お買い上げ原木をお引き取りください。

買上一覧表

買上一覧表

買上一覧表です。

買上報告書(精算書)

買上報告書(精算書)

積込料 : 1㎥当り1100円(税抜き)
2022年7月から原木積込料金額改訂
積込料 : 1㎥当り900円(税抜き)→ 積込料 : 1㎥当り1100円(税抜き)
見本帳票の積込料は、1㎥当り900円(税抜き)で算出されています。

奈良県産材証明書

奈良県産材証明書

お買上げいただいた奈良県産の原木丸太を証明いたします。
要望者のみ送付します。必要な方は連絡下さい。

14、積込み作業

お買い上げいただいた原木丸太をトラックに積込み買主様の製材所・工場などへ運ばれます。

木には必ず履歴が残っています
生きてきた証が刻まれています

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