吉野百年黒杉 心材の色が黒色がかる樹齢百年以上の吉野杉に秘められた驚きの特性を持つ事が解りました! 腐りにくい シロアリに強い カビが生えにくい 吉野百年黒杉 心材が濃い赤〜黒い吉野杉の想い 吉野杉の心材は淡赤色。綺麗な桜色..現実は、伐採される杉のうち一定数の心材が、”濃い赤”・”黒”・”縞(ニエキ)”と個性を持った杉が現れます。 樹齢100年以上の吉野杉の黒心材(”濃い赤”・”黒”)に秘められた特性が、今回の実験によって明らかになりました! 色味は違いますが、年輪の詰まった100年を超える赤身が広がった丸太から製材された材は、 吉野材特有の木目の美しいさまは同じです。 同じ山の杉の木でも心材の色味は違ってきます。 心材の色味別 材質評価 材色と材質の関係 『木材腐朽菌に対する耐朽性』 『シロアリに対しての抵抗性能』は、色黒・色赤の心材ともに高い性能があります。 心材とは 年月の経過とともに辺材から心材へと変化します。心材は、全ての細胞が生活機能を失っており、デンプン等の貯蔵物質は(フェノール性物質等の)心材成分に転化しています。心材部分に含まれる微量成分は、樹木生育中に辺材から心材への移行時に放射柔細胞で作られます。心材が、色黒になる原因は現在不明であり、遺伝的要因や生育時の気候や土壌等の環境も影響していると思われる。 心材の色味別 吉野杉 材質評価試験 奈良県森林技術センター 木材利用課 監修 吉野杉の心材(赤身)の色味が違うことで、材質・性能に違いはあるのか? 実際の試験結果を紹介します。奈良県森林技術センターにて試験を行いました。(※1) 2019年冬〜春に奈良県内の原木市場で取引された丸太16本 吉野杉の心材3種類 縞(ニエキ) : 心材部分が年輪に沿って黒い縞模様がある。No.1〜No.4(4本) 色黒 : 心材の色合いが濃い赤〜黒色。No.11〜No.19(9本) 色赤 : 心材の色合いが淡赤〜赤色。No.21〜No.23(3本) 微量成分の分析 アセトン抽出・揮散分析 心材に含まれる微量成分を抽出してガスクロマトグラフ質量分析計で分析しました。試験体は、心材の最外部から採取し、荒い粉にしてアセトン液に浸せき後、抽出液を定性分析しました。 色黒と 色赤の心材は、一定数の抽出成分量がありました。 色黒には多くの抽出成分が含まれる試験体もあります。心材が 縞の試験体は、抽出成分量が少ない結果となりました。(No.3の試験体を除く)辺材(白太のみ)の抽出成分量は微量でした。 クベドール・4-エピークべドール:セスキテルペンアルコール類に属し、一般に抗菌性の高い成分であることが知られている。フェルギノール:ジカルボン酸に属し、この成分もシロアリや菌に抵抗力があることがすでに報告されている。 色黒と 赤色のスギ心材は、シロアリや菌に抵抗力のある抽出成分を一定量含んでいます。 微量成分(無機物)の分析 X線を照射して含有される無機成分を調べます。心材の最外部、柾目面で直径10mmに対して蛍光X線分析を行いました。 色黒と 色赤の微量成分に大きな差異は見られません。色黒は「カリウム」の含有率が多くなっています。 縞は「カルシウム」が「カリウム」より多く含まれています。(No.3の試験体を除く)杉心材の黒色は「鉄分」と伝え聞いていましたが、鉄分は含まれませんでした。 耐朽性試験(JIS Z 2101準拠) オオウズラタケおよびカワラタケによる腐朽で生じた木材試験体の重量減少率を調べる耐朽性試験を行いました。試験体は、心材の最外部から採取 20×20×20mmを12個ずつ使用。27℃で60日間培養しました。 耐朽性試験の結果 色黒と 色赤は、腐りにくい結果となりました。ヒノキ心材と同等以上の優秀な結果となりました。 縞は、1つの試験体を除いて腐りやすい結果でした。抽出成分の少ない試験体が、腐りが進み重量減少率が高くなりました。 今回の試験体の色黒と色赤は、重量減少率が非常に少なく、高い耐朽性を証明する結果となりました。優秀な結果となった要因として、今回の試験体が年輪が詰まった比較的樹齢の経ったスギであった事が考えられます。高齢木のスギ銘木が、高い生物劣化抵抗性を備えていることが報告されている。(※2) 色黒と 赤色のスギ心材は、高い耐朽性を備えています。 シロアリ抵抗性試験(JIS K 1571準拠) シロアリの活性が認められている場所に試験杭を地中に埋没し、約10ヶ月経過時に杭を掘りおこして、目視による劣化状況の観察を行いました。試験体は、心材の最外部から採取 30×30×350mmの杭を5本ずつ使用。2020年2月設置、2020年12月回収。 シロアリ抵抗性試験の結果 色黒と 色赤は、シロアリに対する高い抵抗性を示しました。 縞は、1本を除いてシロアリ被害が大きく進みました。 「アセトン抽出・揮散分析」の抽出成分量と耐朽性に一定の関係が認められます。 抽出成分量の多い色黒と色赤はシロアリや腐朽菌に対する優秀な抵抗性を示しました。 今回のシロアリ抵抗性試験では、色黒と色赤の試験体はヒノキと同程度以上。コウヤマキに匹敵する試験体もありました。色黒と色赤のスギは、シロアリに対する高い耐蟻性を持っています。 色黒と 赤色のスギ心材は、シロアリに対する高い耐蟻性を持っています。 薬液注入性試験 木材に薬液(防腐剤・不燃剤など)を染み込ませて木材の性質を変化させる時、注入性(染み込みやすさ)が重要となります。試験体は、心材の最外部から採取 30×30×100mm(木口面を封じる)を2本ずつ使用。染み込んだ領域がわかるように、青色染料水溶液を注入して試験しました。 縞は、半数の試験体が良好な注入性を示しました。色黒、色赤は注入性は良くありません。 まとめ 色黒のスギ心材は、腐りにくい・シロアリに強い。→屋外利用へ 縞(ニエキ)のスギ心材は、注入性が良い。→不燃木材、薬剤処理用へ ※1:酒井温子・久保由佳子:奈良県森林技術センター研究報告 No49 (2020)黒色部を含むスギ材の材質評価 (第1報)同一地域で生育したスギの心材色、抽出成分および耐朽性の関係https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030936477※2:伊藤貴文・増田勝則・酒井温子:奈良県森林技術センター研究報告 No37 (2008)スギ材の耐蟻性についてhttp://www.nararinshi.pref.nara.jp/kenpou/no.37/no.37%20e.pdf